もくじ
高粘度エンジンオイルが推奨される旧車や過走行車は冬と夏で粘度を使い分けるべきなのか?
季節や気温に振り回されない粘度の考え方
旧車や走行距離の多い車に乗り始めるとエンジンオイル選びで必ず一度は立ち止まりますよね。お悩みの大半は「高粘度がいいとは聞くけど本当に正解なのか?」「冬と夏でオイルは変えるべきか?」。情報も多すぎるため明確な答えが見えにくいのが現実です。
そこで本記事ではエンジンオイルの役割に触れながら機能や特徴を順を追って整理し最終的に「どのエンジンオイル粘度を選べばいいのか?」を具体的にご紹介させていただきます。
エンジンオイルは「潤滑油」では終わらない
エンジンオイルと言えば金属同士の摩擦を減らす物というイメージが強いかもしれません。
しかし、実際にはそれ以上の役割を担っています。走行中のエンジン内部では高温・高圧・高速回転が同時に起こっているためその過酷な環境の中でオイルは「潤滑」だけではなく熱を逃がし汚れを抱え込み金属表面を守り続けています。特に重要なのは下記工程ですね。
・金属同士が直接触れないようにする(潤滑)
・燃焼で生じた熱を運び去る(冷却)
・ピストンとシリンダーの隙間を埋める(密封)
・スラッジや摩耗粉を浮かせる(洗浄)
・金属の腐食を防ぐ(防錆)
旧車や過走行車ではこれらの中でも「潤滑・密封・防錆」の重要性が格段に高くなります。
旧車・過走行車のエンジン内部で起きていること

当然ですがエンジンは走れば走るほど少しずつ状態が変わっていきます。
これは「壊れている」という意味ではなく「新品ではない」というだけの話です。
長い年月と走行距離によって金属部品はわずかに摩耗し設計時よりもクリアランス(隙間)が広がり、ゴムやシール材は硬化し表面処理やコーティングは徐々に薄れていきます。
その状態で最新車向け低粘度オイルを使うとオイルは簡単に隙間から逃げてしまう。その結果として油膜が保てず異音や油圧低下、オイル消費増加につながることがあるわけですね。
つまり端的に言えば旧車や過走行車では「流れやすさ」よりも「守る力」が求められます。
粘度表示の意味を正しく理解する
エンジンオイルのラベルにある「10W-40」「20W-50」といった数字は単なる記号ではありません。前半数字(Wの前)は低温時、いわゆるエンジン始動時の硬さを表しています。
前半の数字が小さいほど寒い状態でも流れやすくなります。後半の数字は高温時で、わかりやすく言えば走行中の粘度です。後半の数字が大きいほど熱を持った状態でも油膜が厚く保たれるという構造ですね。特に旧車や過走行車で特に重視すべきなのは後半の数字。
走行中にしっかり油膜を維持できるかどうかがエンジン寿命にそのまま直結するわけです。そう考えると旧車や過走行車向けのオイル選びが見えてくるのではないでしょうか?
季節ごとに粘度を変える必要はあるのか?
理論だけを見れば冬は柔らかめ、夏は硬めという考え方は間違いではありません。

しかし実際の使用環境を考えると必ずしもそれがベストとは限りません。現実的には日本の多くの地域では極端な気温になりにくく旧車は効率より安定性が重要であり粘度変更のたびにフィーリングが変わり管理が煩雑になります。そういった理由から1年を通して同じ粘度を使う方がトラブルを避けやすいケースが多いわけです。特に週末メインや不定期使用の車では「季節に合わせる」よりも「常に安心できる状態を保つこと」の方が重要になります。
基本推奨としてのオイル粘度「20W-50」
上記の前提を踏まえると旧車・過走行車の基本としておすすめしやすいのが「20W-50」。この粘度は長年にわたってクラシックカーや設計の古いエンジンで使われてきました。
分かりやすく言えば「摩耗が進んだエンジンでも油膜をしっかり保持」し、高温時でも油圧が安定しやすいといった特徴を持っています。さらにオイル消費やオイルにじみが気になる車両でも症状を穏やかにする効果も期待できたりと一石二鳥です。
エンジンオイル交換後にエンジン音が落ち着くと感じる人が多いのもこの粘度の特徴なので「季節を気にせずまずエンジンを守りたい人」にとっては「20W-50」は非常におすすめです。
入門者には10W-40という選択肢もある
一方で「いきなり20W-50を使うことに不安を感じる人がいる」のも自然なことですよね。
特に高粘度オイルが初めての場合や街乗り中心の使い方では少し軽めの粘度が扱いやすいと感じることもあります。そんな方におすすめなのが「10W-40」。
10W-40は20W-50と比べると始動時の抵抗が少なく、フィーリングも軽めでそれでいて旧車に必要な油膜保持力はしっかり確保できているのが特徴です。そのため「まずは中・高粘度を試すところから始めたい!」という入門者さんにとってはバランスの取れた粘度です。
エンジンオイルの「粘度」以上に大切なこと
上記では主に「粘度」の話をしてきましたが1つだけ覚えておいてほしいことがあります。
それはどんな粘度であっても交換しなければ意味がないということです。旧車や過走行車では最新型のエンジン以上にエンジンオイルオイルの劣化が早く進んでしまいます。
つまり、走行距離だけでなく期間も管理することが重要です。粘度選びで悩み続けるよりも「適したオイル粘度で定期的なオイル交換」がエンジンを長持ちさせる一番の近道です。
【重要ポイント】20W-50と10W-40で粘度を迷った方へ
下記の通り「迷ったときの基準」は意外とシンプルです。
・エンジン保護を最優先しながら安心感を重視するなら「20W-50」
・初めて異なる粘度を試される方で扱いやすさを重視するなら「10W-40」
基本的には(特別寒い地域でなければ)季節ごとの使い分けは必須ではありません。日本では「マイナス15度」まで冷え込むエリアはあまりないので「20W-50」で事足りますよね。
そういった意味では仮にお住いが「北海道」なら「10W-40」の方が安心かもしれません。10Wなら「マイナス25度」まで対応しているので極寒地域ではベストとも言えます。
まずは好みの1本を決めてエンジン音や調子を観察しながら使うことが確実な方法です。
まとめ
エンジンオイルの粘度選びは正解が1つではありません。逆に言えば「だからこそ」多くの方が悩まれています。少しでも長く愛車に乗り続けたい、できるだけ良いコンディションを保ちたい。そんな想いに応えるためJDAでは日々オイルの開発と見直しを重ねてきました。
今回ご紹介した旧車や過走行車向けの「20W-50」と「10W-40」は、単に数値が大きい・硬いという理由で用意したものではございません。実際の走行環境やエンジンの状態を想定しながら「無理なく安心して使い続けられること」に重きを置いて設計しています。
しっかりと保護したい方は「20W-50」。まずはバランス重視で使ってみたい方は「10W-40」。どちらも旧車や過走行車と長く付き合う上ではおすすめのエンジンオイルです。もしオイル選びで迷ったときはぜひこの2本をお試しくださいませ。愛車のこれまでとこれからの付き合い方を考えながら選ぶことが「愛車を長く楽しく走り続けるための第一歩」になるはずです。
日本発の中古車輸出企業からスタート。30ヶ国以上で実績を積み高品質な自動車部品の自社開発も手がけます。エンジンオイル・ブレーキパッド・オイルフィルター・エアフィルター等、こだわりのMADE IN JAPANを世界中へ届けています。




