昨今のエンジンオイル供給不足の背景から、エンジンオイルをより長持ちさせるという観点でエンジンオイル添加剤が注目されています。添加剤を入れる目的は様々ですが、添加剤を入れるからにはそれ相応の効果を感じたいと思う人が大半なのではないでしょうか。
添加剤は色々種類があるため、目的や愛車の状態によって選択するべき添加剤は変わります。今回はその中でも誰もが気になる燃費を向上させる添加剤についてお伝えいたします。
もくじ
市販のエンジンオイル添加剤で燃費はあがるのか
添加剤を入れるだけで燃費が上がる!と聞くと簡単そうに思えますが、実はそう単純な話ではありません。例えば粘度を上げるためには粘度指数向上剤と呼ばれる添加剤、エンジンを綺麗にするためには清浄分散剤と呼ばれる添加剤がありますが、どちらも直接的な効果があります。しかし燃費に直接的に作用する燃費向上剤というものはありません。燃費は添加剤の効果以上にベースオイルの粘度と関連するからです。
そのため、基本的に燃費改善と記載されている添加剤は、燃費向上添加剤が入っているというよりは、様々な添加剤がもたらした効果によってエンジンオイルの役割が強化され、結果的に副作用として燃費向上を期待したものになります。
基本的に燃費は新車の時が一番良いため(慣らし運転などはありますが)、添加剤によってなるべく新車の状態に近づけることが目的となります。そのため添加剤によって一部例外はありますが、基本的に新車に近いほど効果が薄くなり、すべての車の燃費が確実に良くなるとは限りません。
しかし、数あるエンジンオイル添加剤でも、愛車の状態に適切な対策がされた添加剤を入れることで燃費の改善は見込めます。その対策について一緒に確認していきましょう。
燃費が上がる仕組みとは?
先ほど燃費の改善が期待できる理由は、エンジンオイルの役割が強化されるためと説明しました。燃費が上がる仕組みを説明するために、まずはエンジンオイルがもたらす役割について確認しましょう。
エンジンオイルの役割について
エンジンオイルの役割は大きく5つあります。
潤滑性能(スムーズに動かす)
エンジン内部にあるパーツはピストン運動(上下運動)を繰り返すため、パーツ間に摩擦・摩耗が発生する環境にあります。エンジンオイルが油膜を形成することで緩衝剤となり、滑らかに動くことをサポート。エンジンの保護をします。
密封性能(隙間を埋める)
潤滑性能で説明した緩衝剤としての役割だけではなく、パーツ間の隙間を埋める役割も行います。隙間があると精製したエネルギーが漏れてしまい、100%の力がピストンリングに伝わらないため、エンジンオイルが密封の役割を果たします。
洗浄性能(状態を綺麗に保つ)
エンジンオイルが潤滑することによって内部に発生したスラッジ(エンジン内部に発生した燃えカス)や金属摩擦等を取り除き、エンジン内部を綺麗に保ちます。エンジンオイルが黒くなる理由の1つです。
冷却性能(高温負荷状態を軽減する)
エンジンが駆動するうちに燃焼や摩擦等で高温になります。エンジンオイルは熱を吸収し、オイルパン(エンジンオイルを溜めておく場所)に蓄積することで冷却され、再びエンジン内部を潤滑します。高温によってエンジンパワーが落ちることやエンジン部品が破損することを防ぎます。
防錆性能(錆の発生を防ぐ)
エンジン内部は燃焼や回転運動により高温になる関係上、外気との温度差により水分が発生するため、錆が発生しやすい状況になります。エンジン内部の部品に油膜を作ることで水分が直接触れることを防ぎ、錆が発生することを防ぎます。
この中で燃費と関係するのは主に潤滑性能・密封性能・洗浄性能の3つになり、それぞれ燃費改善につながる仕組みが異なります。
燃費が上がる仕組みは?
先ほどの項目がそれぞれどのように燃費に影響するか見てみましょう。
潤滑性能向上(新車~多走行車まで対応)
潤滑性能が低いということはすなわち抵抗力が大きいということです。抵抗力が大きいと本来より駆動に必要なエネルギーが増えるため、燃費の悪化につながります。
エンジンオイルの粘度を下げることは燃費向上につながる可能性がありますが、一方でエンジンの保護に悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、添加剤によって潤滑性能を向上させることで抵抗を減らし余分なエネルギーを使わないようにします。
密封性能向上(主に多走行車向け)
密封性能が低いと燃料から精製したエネルギーが漏れてしまい、精製した100%の力を出すことができずに燃費悪化につながります。
密封性能の向上は、粘度を上げることで厚みのある油膜を作ることで隙間を防ぎ、エネルギー漏れを防ぐという考え方です。粘度を上げるということはその分抵抗が増えるため燃費が下がると考えられていますが、走行距離が多い自動車はエンジンが摩耗しており、密封性能が弱まっている可能性があります。そのため、低粘度より厚い油膜でエネルギーロスを防げる高粘度の方が燃費が良くなる場合があります。
洗浄分散性能向上(主に多走行車向け)
特に多走行車ではエンジンの摩耗による鉄粉やスラッジ(エンジン内部に発生した燃えカス)がたまっている可能性があります。エンジン・エンジンオイル内に汚れが詰まっていると、エンジンオイルの潤滑がうまくいかず効率が落ちるため、燃費の悪化につながります。清浄性能が高い添加剤を使用する事で、エンジン内部を綺麗にし、燃費の改善につなげることができます。特に初回の使用には効果大の傾向があります。ただし、新車や元々エンジン内部がきれいな車には効果が薄いため、必ずしも改善につながるとは限りません。
以上のことから、各性能改善がもたらす燃費向上のイメージとしては以下の様に分けられます。
潤滑性能向上:元々の自動車の燃費性能に+αにする
密封性能・洗浄分散性能向上:低下した自動車の燃費性能を100%近くまで復活させる
つまり、普段乗っている愛車によって必要な性能は異なります。
新車であれば潤滑性能を上げる添加剤、多走行車であれば密封性能を上げる添加剤、中古車を購入して状態がわかりづらいものであれば清浄性能を上げる添加剤等、相性の良い添加剤は変わってくるのです。
燃費改善に効果が期待できる添加剤の間違いない選び方
先ほど燃費が上がる仕組みについて説明しましたが、数あるエンジンオイル添加剤で具体的にどのように選べばいいのかわからないと思う方は多いと思います。というのも具体的に以下の様に考える方は多いのではないでしょうか
このように思われる方が多いのは自然なことだと思います。実際、規格が存在するエンジンオイルと異なり、エンジンオイル添加剤は規格がありません。そのため、エンジンオイル添加剤は各メーカーの技術力が試されています。定期交換が必須のエンジンオイルとは異なり、エンジンオイル添加剤は必ずしも必須のものではありません。あえて入れるからこそ、上質で効果があるものを選ぶべきであると筆者は考えています。そんな間違えにくい選び方を、たとえ話を用いつつプロの知見を基にお伝えします。
①複数の添加剤が入っていることで様々な効果が期待できる添加剤
“燃費が上がる仕組みは?”の項目で、燃費を上げるためにはいくつか手段があること、愛車によって燃費が上がりやすい方法が異なることを説明しました。しかし、走行距離や年式などで愛車に最適な添加剤を想像することはできますが、正確に愛車の燃費が上がりやすい方法を知るためにはエンジンをオーバーホールしないとわかりません。例えば、中古車で愛車を購入した場合、前オーナーがどのように走行していたかわからないですよね。走行距離が短くても、もしかしたら一度もオイル交換をしておらず、走行距離の割にエンジンが摩耗している可能性もあります。つまり、愛車にとって最適と思った方法が実際は違う可能性もあり得ます。
そのため、潤滑性能+清浄分散性能、清浄分散性能+密封性能など、複数の効果改善が期待できる添加剤を使用することで、様々なエンジンの状態に対応でき、ミスマッチを減らせます。
また、一例として同じ潤滑性能向上目的の添加剤でも、モリブデンをはじめとして数種類存在します。1種類だけではなく数種類を最適な配合で入れることで効果は跳ね上がります。清浄分散剤なども同様に複数存在します。コスト(価格)は上がりますが、より効果を期待できます。
一方でエンジンオイル添加剤に含まれている成分の割合によっては、効果が期待できないものもあります。一概には言えませんが、価格の差は添加剤の添加量や種類によって異なるため、1つの判断材料になるかもしれません。
後述しますが、単一目的の添加剤よりも複数の効果を持つ添加剤の方が結果的にコストパフォーマンスが良くなる傾向にあります。
②性能のバランスを崩さない添加剤
エンジンオイル添加剤全般に言えることですが、エンジンオイル添加剤はバランスが大切です。燃費も同様で、1つの性能を上げても別性能が下がることがあり、結果的に燃費が悪化するケースもあります。
よく添加剤は入れない方がいいと考えられる最大の理由は、エンジンオイルのバランスを壊し、結果的にエンジンオイルの総合的な性能を下げてしまう可能性があるからとされています。というのも、エンジンオイルにはすでに必要な添加剤が最適な配合で入っているためです。
別の言い方をすれば、添加剤を入れることで日本の自動車メーカーが採用しているAPI規格から基本的に外れてしまいます。API規格は一部エンジンオイルメーカーや純正エンジンオイルも正式に取得しており、品質を担保した証でもあります。エンジンオイルを選ぶ際にAPI規格を正式に取得している(ドーナツマークがある)エンジンオイルから選んでいる方にとって品質が守られるのか不安ですよね。そのような問題を解決するために、一部のエンジンオイル添加剤にはエンジンオイルに入れてもAPI規格を守りつつ性能を底上げしてくれる特殊配合のものも存在します。最適な配合を活かしつつ、より上質な添加剤を入れることで、燃費性能に加えて他の性能も総合的に+αの効果を期待できます。
③+αの成分が入っている添加剤
先述の通り、エンジンオイルにはすでに複数の添加剤が入っています。もしこの記事をご覧になられている読者の方が、エンジンオイル添加剤を入れても効果が感じづらいという経験をしたことがあるのであれば、それは既にエンジンオイルに同じ成分の添加剤が入っているからという可能性もあります。もちろん添加剤が増えることで効果は上がりますが、エンジンオイル添加剤には規格がないため、添加剤に含まれている成分量は各メーカーによって様々です。
一方、既存のエンジンオイルに含まれていない成分が入った添加剤を追加で入れる場合は大きな効果が見込めます。各エンジンオイル添加剤の説明を確認し、どのような特徴の添加剤かを把握することが大切です。
この3つの選び方で1つ以上当てはまっていたら効果が期待できるといえるでしょう。
① ~③をフライドポテトに例えてみた場合
フライドポテトをエンジンオイルと例えて想像してみましょう。
既に味付けをしているフライドポテト(エンジンオイル)はもちろんそのまま食べてもおいしい(燃費)ですよね。このフライドポテトをさらにおいしくするためのアレンジがいわゆる添加剤の役割です。例えばそこに追加で塩(アレンジ)だけを入れると、味は濃くなりますが素材そのものの味は薄れてしまいます。また、ジャガイモの切り方(アレンジ)を太くすることで、素材感は増しますが、サクサクな食感は失います。
ではこのフライドポテト(エンジンオイル)をどうすればよりおいしくできるかを表したのが上記3つの考えです。
・塩だけではなくジャガイモにも下処理(洗い方やサイズなど)を行うことで、より高級感のあるフライドポテトを作るというのが①の“複数の添加剤が入っていることで様々な効果が期待できる添加剤”という考え方
・素材の黄金比を変えずに塩やジャガイモ、使用する油自体をより高級なものにすることで、素材の味を活かしたフライドポテトを作るというのが②の“性能のバランスを崩さない添加剤”という考え方
・塩だけなく、ケチャップやしょうゆバター風味などを本来備わっていないものを付け加えることで、新たな付加価値をつけるというのが③の“+αの成分が入っている添加剤”という考え方
考え方は異なれど、よりおいしいフライドポテトを作るという目的は同じです。ご自身に合った選び方でエンジンオイル添加剤を探してみてください。
まとめ
いかがだったでしょうか。添加剤というものは全てを良くする魔法の薬ではなく、使いどころを誤ると性能を落としてしまいます。燃費を改善する直接的な添加剤はないからこそ、エンジンオイル添加剤は奥が深く、各メーカーの技術と努力の結晶ともいえます。エンジンオイル添加剤をあえて入れるからこそ、それに見合ったものを選びましょう!




